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サンダルウッドの夢

小原 一哲

あの娘のハンドクリームは未亡人の香り

木イチゴを育てながら

戦死した事も知らない夫を待ち続ける

隣で悲しいパーティしてるから

あんまり深く潜れなくて

割れたビンみたいに

浅瀬をフワフワしてる

その時はすぐ忘れちゃう

高い塔だと思ってたものが

実は月から尻尾が生えてて

それが地面に突き刺さっていただけなんだ

月はずっとそこから動かなくて

太陽がずっと裏側に追いやられて

暗いはずなんだけど明るいんだ

尻尾は少しだけウネウネして

その度に大きい人がやたらと叫ぶ

アーケードの2Fでコーヒーを飲む

あいつは黒いマスクなんてしないのに

なぜか今日はしてたりする

子供と同じ薬をくれた茶髪のオヤジ

ラムネみたいな錠剤を3つも飲まなきゃ

砕いてゼリーと一緒に食べたい

耳の中に白濁した鼓膜がもうひとつあって

洞窟みたいに音が反響する

左はあまり距離を掴めなくて

常にピーンとなってる

激しい音が更にうるさくなって

ちょっぴり心地いいよ

そんな白黒の世界を

ブザーが燃やして

どこからかリアルかわからないまま

あけっぱなしの冷凍庫を怒られる

バイバイ


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