THEE花の下
1人の軍人が歩いていた
ふと目をやると少女が花壇に水をやっている
戦争帰りの軍人にその光景は美しく
同時に平和の象徴として映ったと言う
軍人は少女に話しかける
「綺麗な花だね」
少女は振り向きもせず答える
「花の名は平和、土の名は犠牲
平和は犠牲の上にしか成り立たないの
それは戦争だけじゃなく日常も
国、街、村、学校、そして家族
誰かが犠牲になっているから平和なの」
振り向いた少女の顔は少女ではなく
しわしわの老婆だった
瞬きもせずじっと軍人を見つめたまま
花に水をやっている
その水は血のように赤く赤く、
老婆の目は宇宙のように黒く暗く、
その夜軍人は花壇の側で頭を撃ち抜いた
バイバイ