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THEE ロージープリズンディナー

小原 一哲

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夕方になると嗚咽がおさまらない

腹ん中にいる2人目の天使ががなりたてる

妻のために頭を丸めた男の

顔には6つの穴が空いている

右腕には血の繋がっていない唯一の

さくらんぼ爆弾の鮮やかな絵画

重たい腰をあげて向かうキッチン

自分で作ったキャロットドレッシングは

水菜の緑ととても映えるがすこぶる不味い

食べたくもない野菜スープを啜るけど

ライオンは肉しか食わないし

1人目の天使も肉しか食わない

気を使ってバジルとかかけてみるけど

パリのイメージだったはずのディナーが

刑務所のギャングの気分

全ては想像力

先天性でもなければ知識量でもない

ほんの先の未来を予測できる想像力

これがセンスの正体

生まれ持つのでなく、鍛え上げるのである

散らかったシンクに立つ男

ゾンビの様にくたばる女

踊り狂う幼児

暴れ回る元受精卵

春の夜はブラブラと老けていく。

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