THEE カサブランカ・センチュリー
1991年から2024年
薄汚れてたその犬の毛並みは
ガビガビと引き換えに33年前の姿
毛に覆われてるその目はとても大きい
何も知らない無邪気が2世代
体中をよだれまみれにしやがる
キバもツメもないけど綿はある
名前はカサブランカ
33年間名無しだったんだけど
この前ようやく名前がついた
名前はカサブランカ
特に意味なくて響きがいいから
夜を独り占めするカサブランカは
時に枕元に時に足元に
最近は名前がないたくさんの平面の犬共に
仕事を奪われたりしてる
1歳にしてセンチュリーを乗りまわす幼児
ヤクザか皇族か
センチュリーは誰も乗ってなくて
だって初めからドアが開かないしさ
サスペンションはエグったらしいけど
ナンバーもありゃしない
納車したのは昨日
箱から出したらずっと一緒さ
アニマル宴会の真っ赤なロンドンバスは
しばしの休暇をもらって転がる
プラスチックの消防車はぜんまい式
緋い月が照らしてる
部屋の隅から隅までをあったかくして
カサブランカもセンチュリーもその他も
ちぎったトーストと切ったオムレツは同じ数
緋い月は世界が終わるまで隅々を照らしてる。