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THEE 悪意なき甘い散弾銃

小原 一哲

IMG-4131.jpg

(ボトルネック)
例えば瓶の中の水を捨てる時、口がすぼまってる構造上
どうしても水の流れが悪くなる
この場合システムの向上を図るにはその部分を破壊するより方法はなし

さわやかなブルーの表紙とは裏腹に
絶望スタートから更に絶望に叩き落とされる極悪非道小説

主人公は2年前に東尋坊で恋人を亡くした男
花を手向に来た拍子に自分も東尋坊に落っこちる
ふと目覚めると自宅近くの公園
不思議に思い自宅に戻ると‥
そこには死んだはずの兄
そして産まれるはずのなかった姉と生まれなかった自分
そう
パラレルワールドにスライドする小説

私達は常に選択して生きていく
そして選択されなかった側に枝分かれした平行世界があったら

その世界には主人公の世界とは違い
父母が仲良く
兄が生きており
存在しなかった姉がいる
そして死んだはずの恋人が元気に暮らしている

自分がどれだけもがき、努力しても変えられない世界が
他人の手でそれもいとも簡単に変えれたら

今まで自分が行ってきた行動が全て間違いであり
それを悪意のない態度で踏み躙られたら

100の努力も1の才能の前では全くの無駄
日本人はやたらと努力に対して見返りや成果、努力した事の美学に縋り付きます
所詮
短所を努力して克服したところでせいぜい人並み
それなら長所を伸ばした方がいい
日本に蔓延する苦労賛美主義を粉々に打ち砕く傑作小説です

自分のいた世界より確実に幸せなパラレルワールド
這いつくばって努力して崩れてしまった結果をいとも簡単に成功させる他人
積み上げた努力と苦労が脆くも崩壊する
嫌いでこきおろしてた相手が実は自分の嫌な部分の投影
どれだけ願っても手に入れられなかった未来がここには当たり前に存在する
取り巻く全てが悪意なき散弾銃となり身を引き裂きます

これを読んだ後に果たして今いる世界は存在するのか?
自分の存在意義も侵される傑作小説です。

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