THEE ジャックとナンシー
ジャックとナンシーっていう人間がいる
ジャックの髪型はいつもきっちりのリーゼント
着ているものもシワひとつないスーツに
たくさんのシルバーとレザーで武装している
一方ナンシーは洗いざらしのロングヘア
色は綺麗な赤毛
綿だかポリエステルだかわからない服を着てる
左腕には流行りの腕時計が
ジャックは言う
「人間の気持ちは分からない」
ナンシーは言う
「人間の気持ちは分かる」
お互いがお互いを冷たい人間だと言う
ジャック曰く
人間の気持ちを分かる人間は信用できない
それは気持ちが分かるんではなく
自分の気持ちを相手に投影、押し付けの形なんだ
ナンシー曰く
同じ人間なのだろう
共感して群れをなしての民族
そうやって発展してきた
ジャックはルールよりマナーを優先する
マナーが他人思いでルールは自分主体だからだ
ナンシーはマナーよりルールを優先する
ルールを守ってこそのマナーだと
ジャックはいつも爆発しそうな何かを抱えており
ナンシーはいつまでもおおらかだ
ジャックは人付き合いが好きではなく
休みの日は大抵1人で小説を読み耽ってる
ナンシーは友達がたくさんおり
休みの日は大抵家にいない
ジャックは他の誰にもなりたくないし
ナンシーは他の誰かと混ざり合いたいと思う
ある時村が盗賊に襲われた
燃え盛る家々
逃げ惑う人々
ジャックは我先に他人を踏みつけて逃げ出す
ナンシーは家の下敷きになった人を助ける
炎がようやく落ち着いた頃
今だに燻る残骸ども
黒く焼けこげた骸に微かに分かる赤毛
少し笑いながら立つのは崩れたリーゼント
バイバイ