Home > THEE 悪魔が30分後に囁く


Blog

THEE 悪魔が30分後に囁く

小原 一哲

IMG-3929.jpg
安売り中国人の店と
ガラクタばかりが置かれているお土産屋
そいつらに犯されながらその街はまだある

牙を剥き出し喉笛を噛みちぎりそうだったその姿は今は尻尾を振ってるただのイヌッコロ
「過去の栄光をいつまでも引きずるのと女のケツを追い回してる事ほどみっともない事はない」

そんな醜態を晒しながらまだ姿を残すそこは嫌いじゃない
子供の笑い声も時として必要ない事もある

空っぽになった洗剤の容器を嗅いでみると微かに洗剤の香り
そんな印象を残しながら存在し続ける

昔からある小汚いビルの1F
ティーンエイジャー達のガラス玉を搾取するために存在する店

そこに1人の男がいた
全身にお絵描きして耳に風穴の聴こえる男は実は優しい
もう何年もの付き合いだけど色々やってきたみたいだ

一畳にも満たない銀色に囲まれたその場所でボロボロのパイプ椅子に座る
申し訳程度の赤いタオルが暖かくする

「自分の中の忘れられない思い出を形にしたくて痛みを欲するの」
訳の分からない事を喚く黒人

銀色の悪魔が挿入される
多少の痛みと背徳感と希望を抱えて

「悪魔は叫ばない、ただ囁くだけ」
90年代の世紀末に骨と皮だけのパンクスが言っていた
「羽根に開けられた穴の責任の代償は自由なのか?」

フラスコの中の溶液がたった一滴の溶液で色が変わる様な感じがしてとても綺麗でやめられない
灰色の女が出す細かい針に打たれながら歩く
失った物と引き換えに得た強さを耳に感じながら歩く

1時間のちょうど半分
その悪魔は熱を帯びながら囁く
決して叫ばず耳元で囁き出す

その時見た腐って存在する病院が妙に心を打つ
たくさんの人を癒してきたその女神はもう既に呼吸を止め、カラカラに乾いて横たわっていた

Go to Top